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「カーボンリサイクル高炉+CCU」を軸とした超革新的技術開発への挑戦

JFEホールディングス株式会社

概要

 JFEグループは、気候変動問題は事業継続の観点から極めて重要な経営課題であり、異常気象の顕在化などの地球規模での気候変動問題への対応が急務であると考えています。そこで、企業理念「JFEグループは、常に世界最高の技術をもって社会に貢献します。」のもと、気候変動問題の解決に向けて新技術の研究開発を加速し、超革新的技術に挑戦することで2050年カーボンニュートラルの実現を目指します。また、事業リスクへの対応だけでなく、持続可能な社会の実現に貢献する事業機会の拡大を推進し、社会全体のCO₂削減に貢献することで企業価値の向上を図っていきます。

 JFEグループの鉄鋼事業部門であるJFEスチールでは、省エネ設備の導入促進やスクラップ利用の拡大等により、2013年度実績比で2024年度末のCO₂排出量を18%削減し、その後についてもカーボンリサイクル高炉とCCUの組み合わせを軸とした超革新的技術開発への挑戦やその他鉄鋼プロセスの脱炭素化等によって、2050年のカーボンニュートラルを目指します。

 

説明

 現在の製鉄プロセスはいずれにも優位性と問題点があり、複線的な技術開発が必要です。現在主流となっている高炉法も、生産性が高く高級鋼を生産できるなどの多くの長所がある一方、鉄鉱石を還元し溶融する際にCO₂を発生するという短所もあります。JFEスチールは、カーボンニュートラル(CN)を目指すうえで、カーボンリサイクル高炉(CR高炉)とCCUを組み合わせた技術や水素製鉄(直接還元)を主軸とし、様々な超革新的技術開発に複線的にアプローチするとともに、業界トップクラスの電気炉技術を最大活用していきます。

 CR高炉とは、製鉄プロセスから排出するCO₂を、再生可能エネルギーなどで生成したグリーン水素を用いてメタン(カーボンニュートラルメタン)に変換(メタネーション反応という)し、高炉の石炭由来還元材と置換するものです。高炉で使用できなかった余剰のCO₂は、メタノールなどの基礎化学品製造に用いることで、CO₂排出を削減します。

 通常の高炉では高温の空気を炉内に吹き込むのに対して、CR高炉では100%酸素とメタンを炉内に吹き込むことにより、窒素ガスの昇温に使われていた燃焼熱をメタンの昇温に使用できるようになるため、メタン吹込み量の最大化を図ることができます。大量のカーボンニュートラルメタンを酸素と共に吹込み、CO₂を削減する技術は世界初のチャレンジです。さらに、高炉ガス中の窒素をゼロ化することで排ガス量が少なくなり(排ガス量は約1/2)、CO₂濃度が高くなるため分離プロセスの小型化が可能になります。大規模メタネーション設備との連動操業も世界初のチャレンジになります。

 CCUについては、公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)様との共同開発で、製鉄所排出ガスを用いたCCUメタノール合成に関して、H2Oを選択的に透過する分離膜(RITE開発の無機膜;従来の膜よりも高性能)によって従来型反応器の性能を大幅に上回る新方式反応器を開発中です。今後、CR高炉との組み合わせによりCO₂削減の拡大を計画しています。

 CR高炉では、(1)シミュレーションモデル開発、(2)炉内現象(ガス流れ、温度分布)解析による操業設計および設備設計、(3)純酸素メタンバーナー燃焼実験による燃焼効率最大化、(4)高炉ガスに対応した最適メタネーション技術の開発、の要素技術開発を実施します。また、実機の京浜2高炉での部分実証ののち、150m3規模の小型高炉試験を実施して2027年までのプロセス原理の実証を目指します。CCUメタノール合成では、CCU向け低コストCO₂分離技術、高効率メタノール合成反応器の要素技術開発と、CO₂分離ラボ実験によるCO₂分離効率評価、運転方法決定、メタノール合成ラボ実験による反応率評価、反応率最大化、シミュレーションの基本設計を完了した後、2027年までに小型反応器試験によるプロセス原理実証の完了を目指します。いずれの技術も、原理実証後にスケールアップと実機化を検討していきます。

  

連携先

公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)

  

補足情報

JFEグループ環境経営ビジョン2050 説明会資料

https://www.jfe-holdings.co.jp/investor/management/plan/index.html#20210525

公益財団法人地球環境産業技術研究機構 無機膜研究センター ホームページ

https://www.rite.or.jp/membranes/

  

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