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アンモニア直接燃焼技術「舶用ディーゼルエンジンへの適用」

JFEホールディングス株式会社

Ammonia mixed combustion in diesel engine

Combustion temperature distribution

Mixture flow in combustion chamber

概要

 地球温暖化を背景としGHG削減が強く求められる中,海事分野においても国際海事機関(IMO)にて船舶由来のGHG削減が義務化され、2008年をベースに,2030年までに40%,2050年までに50%削減,最終的には,2100年までにGHG排出ゼロが目標として定められた。すでに2020年からは20%削減義務が始まっているが、数値実現には船体の形状改善のほか推進装置であるエンジンの高効率化、燃料転換の取り組みが急務となっている。その中でCO₂フリーであるアンモニア直接燃焼エンジンの開発が注目され始めている。

 JFEでは2017年よりSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)に参画し、舶用ディーゼルエンジンにおけるアンモニア燃料の適用につき取り組みを開始した。難燃性であるアンモニアの燃焼率95%以上の実現を目指し開発実施。目標達成の指針を得ることが出来たが2018年SIP終了後も更なる改善、最適設計指針を取得するために継続して独自に技術開発を実施している。

  

説明

 JFEエンジニアリング(株)では船舶用主機関として3,000~24,000kW級4ストロークディーゼルエンジンを商品化している。GHG削減取り組みとして保有エンジンをベースとし、アンモニアを燃焼室に投入、予混合気を作り、そこに重油噴射を行い混合燃焼を行う開発を実施している。SIPではアンモニア20%、重油80%の比率で混焼させCO₂削減(GHG削減)20%に対応させる開発に注力し技術指針を得た。SIP後の開発ではアンモニア混焼比率を50%まで上げ安定燃焼を得る燃焼条件を獲得。現在は今後大幅に強化されるGHG削減目標に向けアンモニア投入率を80%にまで上げCO₂ 80%削減を実現する技術開発を数値解析により実施中である。

  

(1)燃料転換によるGHG削減アプローチ

 燃料転換では重油からLNGへの移行が既に始まっており、特にヨーロッパでは複数の船がLNGを燃料として航行している。しかし,LNGへの転換では重油利用時に比しおよそ20%のGHG削減となるだけであり,将来の規制強化には対応できない。

 将来的にGHGゼロを目指すためには炭素を含まない燃料が必須となり、アンモニア、水素が候補となる。船舶用燃料として重要なファクターは燃料の体積当たりのエネルギー密度の高さ、燃料が容易に液化することにある。これは船舶の限られたスペースにより低コストで燃料タンクを設置する必要性からである。

 本観点よりアンモニアは水素と比較し下記理由より有望な燃料と言える。

■アンモニアの水素密度(エネルギ密度)は液体水素の1.7倍と貯蔵・輸送効率に優れている。

 水素キャリアとしてもアンモニアが最も有望な転換燃料ルート

■ハンドリングはLPGと同等で容易、LPG船はアンモニア輸送への適用も可能

 (沸点 アンモニア:-33℃、プロパン:-42℃、LNG:-161℃、水素:-252℃)

■アンモニアは直接燃焼が可能であり、舶用エンジン用燃料として適用可能性あり

  

(2)開発取り組み

 アンモニアは前述の利点はあるものの着火温度が651℃(重油:250〜380℃)と高く難燃性であるため燃焼率を向上させる技術開発が必要となる。JFEではアンモニアをエンジン給気と混合させ予混合気を作り、主ディーゼル燃料を点火源として混合燃焼させる手法を解析的なアプローチで開発を行っている。

 具体的には、実機ベース(ボア×ストローク 400×500mmクラス)の燃焼室をモデル化し、混合気形成および燃焼シミュレーションを実施。給気ポートへガス態でアンモニアを供給し主燃料油噴射時における予混合気アンモニア濃度、層状度(アンモニア分布)、主燃料油噴射時期、噴射パターン、燃焼室流動をパラメターに排ガス特性、効率、未燃アンモニアへの影響度を調査。また、シミュレーション結果よりエンジン仕様の検討を行い、主に燃料噴射系、アンモニアガス系の試設計を実施している。以下に開発目標を示す。

■開発目標

・未燃アンモニア:5%以下 (95%以上の燃焼率)

・NOx:TireⅡ NOx規制を満足させる

・アンモニア20%投入により効率向上も加味しCO₂の20%以上排出削減 (SIP目標)

・アンモニア混焼比率をさらに80%まで増加させ安定燃焼させる技術獲得

  

(3)現在までの成果

①燃焼シミュレーション

 下に示す5要素をパラメターとして変更し計算を実施。未燃アンモニアへの影響度、効率、および各排ガス特性につき把握を行った。

・空気過剰率 :混合気濃度の影響(燃焼温度の影響)

・混合気層状度  :予混合アンモニア濃度分布の影響(高温燃焼域へのNH3濃度分布影響)

・燃焼室内流動 :スワール強度の燃焼への影響

・燃料油噴射時期 :燃焼最高圧力の影響

・噴射パターン :プレ燃料油噴射による未燃アンモニアへの影響

 結果としてアンモニア混合比率20%条件にて、アンモニア+空気混合気の層状度を±70%(壁面リッチ)とし、燃料油主燃焼における高温領域にアンモニアを過濃に分布させることにより、NOx値をベースディーゼルと同等値に維持しつつ、未燃アンモニアをほぼ5%以下まで低減できる計算結果が得られた。また、燃料油を2段階噴射させることにより3.5%まで低減できる諸元も見出した。さらに、燃焼室スワール最適化により、アンモニア混合比率50%において、未燃アンモニア2%以下、NOx値もTierⅡ以下と今後のアンモニア混合比率上昇への指針を得ることができた。

②混合気形成シミュレーション

 燃焼シミュレーションンにて得られた最適混合気分布を実機にて成立させるべく、アンモニアの燃焼室への投入手法、燃焼室内混合気流動を検討し、実機設計への指針を取得。

  

(4)今後の取り組み

 現在までの成果に基づき、性能改善、混合気形成手法の改善を演算手法にて実施し、実機の開発を計画する。

  

(5)結言

 2020年1月に出された国土交通省の国際海運GHG削減ロードマップにおいてアンモニア燃料の有用性が明記され、IMOでは2040年には約25%の燃料がアンモニアもしくは水素に転換され、2050年以降45%近くを占めるとの一シナリオを描いている。

 また船舶建造調査より、4ストロークエンジンでは10~15隻/年のアンンモニア輸送船建造予測(LPG船兼用含む)が得られ、将来的にはアンモニア燃料直接燃焼を可能としたディーゼルエンジンの需要が確認できた。さらにアンモニア輸送船以外、フェリー等他の船種への適用も期待される。

 JFEにおいてはこれら予測を基に海運におけるGHG削減策の対応を今後とも図っていく所存である。

  

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