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水素発電技術の開発

川崎重工業株式会社

水素ガスタービンコジェネレーションシステム実証設備(神戸ポートアイランド)

水素専焼ドライ低NOx燃焼器

概要

 水素サプライチェーンの実現には、水素をより安く、現在の石油や天然ガスなどの化石燃料と同程度のコストにしていくことが重要です。そのためには、水素の需要を大幅に増加させて、スケールメリットにより水素のコストを削減する必要があります。

 水素エネルギー有効利用の一つが水素ガスタービンによる発電です。大量のエネルギーを使用する発電所でCO₂フリー水素が利用されるとCO₂削減へのインパクトは非常に大きくなります。

 当社は、中小型ガスタービン発電装置による純水素発電に向け、クリーンな水素燃焼技術の開発や水素発電実証を進めています。2018年には世界で初めて市街地での水素発電に成功し、さらなる高性能・クリーン発電を目指して改良を重ねています。

  

説明

 経済産業省が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、2025年頃より水素発電の社会実装が促進されるとされています。水素を天然ガスに替わる発電用燃料として活用できれば、水素の大量利用により水素サプライチェーンの実現に大きく貢献できます。水素による発電は、燃料電池での利用が始まっていますが、大きな発電容量でスケールメリットを追求するには、ガスタービンの利用が有望です。

 ガスタービンは多様な燃料に対応でき、水素を燃料とすることもできますが、水素は天然ガスの7倍の速さで燃え、しかも燃焼温度が高くなる特性があります。また、技術的には、燃料ノズルの焼損、不安定な燃焼、大気汚染物質であるNOx発生の増大などの課題を克服しなければなりません。こうした水素の特性に対応した燃焼器の開発には、高い技術力が求められます。

 当社は独自の燃焼方式で水素と天然ガスの混合燃焼、さらに水素100%燃焼(専焼)を実現させ、ガスタービン本体は天然ガス用のままで水素の燃焼特性にも対応可能な燃焼器の開発に成功しました。すなわち、既設のガスタービンも燃焼器を改造することで水素燃料にも対応できるようになります。以下に当社の取組をご紹介致します。

 

(1) 水素ガスタービン発電技術の実証

 2018年度に当社は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)助成事業「水素CGS活用スマートコミュニティ技術開発事業」として、大林組とりまとめの下、神戸市、関西電力㈱、岩谷産業㈱ほかと協力して、水素ガスタービンコージェネレーションの市街地における技術実証に成功しました。当社製1MW級ガスタービンをベースとした実証設備を神戸市ポートアイランドに設置し、近隣の公共施設に熱と電気を供給しました。市街地での純水素を燃料としたガスタービンの利用では世界初の実績となります。

(2) 水素専焼ドライ低NOx燃焼技術の開発

 燃焼温度が高くなり、NOxが発生しやすくなるという水素燃焼の課題に対し、燃焼温度を下げるために水を噴射する技術があります。しかし、水を噴射するとわずかに燃費が下がることから、当社では微小な水素火炎を用いた水素専焼ドライ低NOx燃焼技術についても開発を行っています。シャープペンシルの芯ほどの小さなノズルから、小分けにして燃料を噴出し、「マイクロな炎」で燃やしきることで、水を噴射せずにNOx生成を抑えつつ、水素100%で燃焼させることができます。

 2020年5月より、NEDO助成事業「ドライ低NOx水素専焼ガスタービン技術開発・実証事業」として、上記(1)に示した水素コジェネレーションシステム実証設備にて、この燃焼器を搭載したエンジンの実証運転を開始し、水素専焼ドライ低NOx発電に世界で初めて成功しました。

  

 当社が開発した水素燃焼技術ならびに水素燃焼ガスタービンにより、水素を天然ガスと同様にガスタービンの燃料として使用することが可能になると、将来の水素社会および脱炭素社会の実現に大きく貢献できるものと考えます。

  

連携先

(1) NEDO助成事業「水素CGS活用スマートコミュニティ技術開発事業」連携先

株式会社大林組、神戸市、関西電力株式会社、岩谷産業株式会社、株式会社関電エネルギーソリューション(Kenes)、国立大学法人大阪大学

(2) NEDO助成事業「ドライ低NOx水素専焼ガスタービン技術開発・実証事業」連携先

株式会社大林組、神戸市、関西電力株式会社、岩谷産業株式会社、株式会社関電エネルギーソリューション(Kenes)、国立大学法人大阪大学、学校法人関西大学

(2) の事業は以下の研究で得られた成果をもとにしています。

・2014-15年度:SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「エネルギーキャリア/水素燃焼技術開発」(管理法人:国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST))

・2016-18年度:NEDO委託研究事業「水素利用等先導研究開発事業/大規模水素利用技術の研究開発/水素ガスタービン燃焼技術の研究開発」

 

補足情報

川崎重工業HP「Kawasaki Hydrogen Road」

 https://www.khi.co.jp/stories/hydrogen/

川崎重工業プレスリリース

 https://www.khi.co.jp/pressrelease/45db7cbc53ebcd3e0c979de31b0c0b2d.pdf

 https://www.khi.co.jp/pressrelease/news_200721-1.pdf

YouTube Kawasaki Group Channel「水素CGS活用スマートコミュニティ」

 https://www.youtube.com/watch?v=oP6Zh6X1Zvs

 

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