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促進輸送膜による高効率な二酸化炭素分離 ~CCUS技術への適用~

住友化学株式会社

概要

CO2は最も代表的な温室効果ガスであり、パリ協定で合意された世界の平均気温の上昇を産業革命前と比較して2℃未満に抑えるという目標の実現に向けて、CCS (Carbon Capture & Storage)やCCU(Carbon Capture & Utilization)を含むCO2の排出量削減が、地球規模での大きな課題となっています。
混合ガスからのCO2の分離において、CO2を特殊な分離膜を使って分離する方法は、他の分離方法に比べて大幅な省エネルギー化が可能なことから、世界で大きな期待を集めています。住友化学では、2013年からCO2分離膜の研究開発を進めています。
※ CO2分離膜は、地球温暖化対策の分野に貢献できる製品として“Sumika Sustainable Solutions (SSS)”に認定されています。

説明

混合ガスからCO2を分離する方法としては、吸収法、吸着法、膜分離法などがあります。その中で膜分離法は、膜の両側でCO2の分圧に差があれば分離が行えるので、再生時に加熱が必要な吸収法や高圧への圧縮が必要な吸着法(PSA法)に比べて本質的に省エネルギーであり、その適用拡大がおおいに期待されています。
当社のCO2分離膜は「促進輸送膜」と呼ばれるもので、吸水性ポリマーの薄膜中にCO2と選択的・可逆的に反応するキャリア成分を配しています。この成分がCO2分圧の高い側でCO2と結合し、低い側でCO2を放出することにより、H2, CO, N2, CH4など種々の成分との混合ガスから、高い選択性・高い透過性でCO2を分離することができます。中でもH2からのCO2の透過分離は、溶解拡散膜や分子篩膜といった他の分離膜では実現困難であるのに対して、当社膜では高効率で行えることにひとつの大きな特長があります。
当社では、分離膜のロールtoロール連続成膜技術、および大面積の分離膜と供給側・透過側それぞれのガスの流路を巧みに配した「スパイラル型エレメント」とその作製技術を確立しました。エレメントは円柱型でその典型的な寸法は、長さ1m、直径0.2m程度です。配管を接続したハウジングにこのエレメントを納めてCO2分離を行うことができます。促進輸送膜エレメントを産業に適用できるレベルまで開発しているのは、世界でも当社だけと認識しています。
当社CO2分離膜の適用先としては、(1) 炭化水素の改質によって製造される合成ガス(Syngas)からの水素製造や燃料電池システムにおける高効率なCO2分離、(2)天然ガスや嫌気性発酵で製造されるバイオガスのメタン濃縮におけるCO2分離などがありますが、さらに今後は(3) 廃プラスチックの循環利用プロセスへの適用や、(4) 発電所・ボイラー等の燃焼排ガスからのCO2分離への応用も視野に入れ、さらなる高性能化に向けて研究開発を継続しています。

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