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農作物残渣物をバイオマス燃料として有効活用~産出国のサーキュラーエコノミー化とエネルギー脱炭素化への貢献を目指す~

テスホールディングス株式会社

概要

TESSグループは、世界的なエネルギー脱炭素化に向けた取り組みの一環として、農作物残渣をバイオマス燃料として有効活用するための研究開発を進めています。このうち、東南アジアのパーム油産業から排出される農作物残渣の活用を目指し、パーム油の最大産出国であるインドネシアに研究開発のための子会社「PT PTEC RESEARCH AND DEVEROPMENT」を設立しました。ここで、パーム産業の代表的な未利用残渣物であるEFB(Empty Fruit Bunch:椰子空果房)やOPT(Old Palm Trunk:パーム古木)等を原料に、バイオマス発電の燃料を製造・販売することを目標とした技術開発を行っています。

これらの未利用残渣物は腐敗過程で温室効果ガスであるメタンが発生する等、産出国において社会問題となっています。そのため、EFBやOPT等の未利用材をバイオマス燃料として有効活用することで、産出国が抱える社会課題の解決や、世界的なエネルギー脱炭素化への貢献を目指します。

説明

✔チャレンジにおける到達目標

・パーム油残渣物であるEFBやOPTの有効活用を図り、バイオマス燃料として長期安定的な供給を実現することで、パーム油産出国におけるサーキュラーエコノミーの実現や、TESSグループのパーパスである世界的なエネルギー脱炭素化に貢献します。

・出荷目標としては、2030年に年間100万トン以上を目指します。

(日本における再生可能エネルギー固定価格買取制度(以下「FIT制度」)において、EFBがバイオマス燃料として認められることを前提としています。)

✔社会背景

インドネシアは世界最大のパーム油生産国であり、パーム油産業はインドネシアの経済を支える重要な産業になっています。その一方で、パーム油を搾油する際に大量に出てくるEFBは、肥料や燃材等に利用される以外の大半は有効な活用方法が無いことから、未利用のまま放置されており、土壌汚染やメタンガス発生等の問題を引き起こしています。また、植林から年数が経過して収穫が落ちたパーム椰子は、伐採して再植林することが望ましいとされていますが、伐採した古木の用途がなく、処理にも費用がかかるため中小規模農園ではなかなか進んでいません。収穫を維持するために近隣の原生林を伐開して新たな農園にする等、乱開発の温床となっています。そのため、EFBやOPTの有効活用を図っていくことで、これらの問題を解消していくことが求められています。

バイオマス燃料の需要側では、世界的な脱炭素化の流れの中でバイオマス発電の重要性が増しており、バイオマス燃料の需要が年々増大しています。しかしながら、大規模な火力発電所で消費されるバイオマス燃料は木質ペレットやPKS(Palm Kernel Shell:椰子殻)に限られており、燃料供給の逼迫等が課題として挙げられております。そのため、新しく持続可能なバイオマス燃料として活用できる原料が模索されています。

✔具体的なアクション

このような社会背景を受け、TESSグループでは、EFBやOPT等の残渣物を原料としたペレットを製造・販売し、有効活用を図ることを目的として、2018年に「PTEC(Palm Tree Energy Conversion)プロジェクト」を立ち上げました。

現在は、インドネシア・バタム島に試験プラントを建設し、自社社員を派遣して技術開発を進めています。2021年以降は、EFBペレットの燃料連続製造にも成功し、今後は2025年から大規模生産を開始する予定です。生産開始後は、主に日本におけるFIT制度を活用するバイオマス発電所への燃料供給に加え、インドネシア国内における発電所等にも展開していくことで、インドネシアにおけるサーキュラーエコノミーへの貢献も考えております。

✔チャレンジに向けた課題

製造・販売を継続し、長期的にEFBやOPTの有効活用を図っていくためには、木質ペレット等の既存燃料と比べた価格競争力を持つことが必要です。EFBやOPTは燃焼設備に悪影響を及ぼす成分が多く含まれているため、燃料として使用するためにはこれらの成分を除去する必要があります。このために工場での追加的な加工が必要となり、それを考慮してなお安価な水準を確保できるような原料調達や製造技術(有害成分を効率よく除去する技術等)を確立する必要があります。

また、パーム油産業におけるプランテーションの乱開発や粗雑な運営管理が問題視されたことから、持続可能な環境で栽培・採取されているかの認証を得ることが求められています。本プロジェクトでは、第三者機関による持続可能性の認証の取得を予定しているほか、自社においても持続可能な栽培環境が維持されているかを確認する仕組みを整えてまいります。

✔チャレンジが実現した場合の効果

EFBやOPTを原料としてペレットに活用していくことにより、パーム油の生産工程における廃棄物の削減を実現するだけでなく、それによりインドネシアが抱える土壌汚染やメタンガス発生による温室効果ガス増加、新規農園の乱開発等の社会問題の解決への貢献が期待できます。そして、製造したEFBやOPTペレットを、新しい持続可能なバイオマス燃料として世界の脱炭素需要に向けて供給することで、脱炭素社会の実現に貢献することができます。

産出国側においては、残渣物を活用した燃料を自国の火力発電所で有効活用することによるサーキュラーエコノミーの実現や、ペレット製造工場において、広く地域全体に新たな雇用を創出する効果も期待できます。

補足情報

「TESSグループ 中期経営方針」にも本プロジェクトについて掲載していますのでご参照ください。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/5074/ir_material_for_fiscal_ym1/123785/00.pdf

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