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低炭素コンクリート

鹿島建設株式会社

図1 低炭素コンクリートの種類

図2 高炉スラグ微粉末コンクリートの用途とCO2削減率

図3 エコクリートR3の概要

概要

当社は,環境配慮,高品質,経済性の視点を組み合わせたコンセプトを策定し,持続可能な社会の構築に寄与する取組みの一環として「低炭素」の視点から図1に示す通り4つの低炭素コンクリートを開発し実用化している。これらは,部位ごとの要求性能に合致させるため高炉スラグ微粉末の置換率を変化させるとともに従来の欠点を改良した3種類の高炉スラグ微粉末コンクリートと,レディーミクストコンクリート(以下,生コンという)工場において廃棄物として最終処分されていた生コンスラッジを乾燥スラッジ微粉末(以下,CemR3と称す)に加工しこれを混和した再生セメントコンクリート(以下,エコクリートR3という)1種類である。以上のように改良した高炉スラグ微粉末やCemR3はセメント用混和材として従来のポルトランドセメントの一部に置換して用いることができ,置換率に応じた二酸化炭素排出量の低減効果がある。

説明

1.各コンクリートの特徴
(1)高炉スラグ微粉末を用いたコンクリート
当社は3種類の高炉スラグ微粉末を用いたセメントコンクリートを開発し実用化している。これらを高炉スラグ微粉末の置換率の高い順にECMコンクリート,KKCコンクリート,BLSコンクリートと呼び,図2に示す通り地下躯体であるマスコンクリート,CFT柱用充填コンクリート,地上躯体コンクリートに適用している。また,置換率はそれぞれ混合セメントの高炉セメントC種,同B種,同A種に相当する。これらは置換率でみれば従来の高炉セメントと同じであるが,用途別のニーズに合致したコンクリート特性が得られるように画期的な改良を実施している。

(2)再生セメントコンクリート
工事現場で使われずに生コン工場に返却された戻りコンクリートを起源とする乾燥スラッジ微粉末CemR3を混和材として用いたエコクリートR3を図3に示す通り開発した。CemR3をセメント代替として結合材の20%~30%添加したエコクリートR3は,普通コンクリートと比較し同等な品質であることを実験的に確認後,JIS認証を取得したレディーミクストコンクリートとして鉄筋コンクリート造の建築物に適用している。

2.チャレンジにおける到達目標
地球レベルの環境問題を鑑みても,CO2排出量の削減は喫緊の課題であり,我が国においてはCO2排出量の約4%を占めるセメント関連分野における低炭素化への取組みは非常に有意義である。当社は鹿島環境ビジョン:トリプルZero2050において低炭素の観点から自社活動と提供する建造物からの温室効果ガス排出ゼロを目指している。

3.チャレンジ実現に向けて克服すべき課題
セメントメーカや生コン共同組合,生コン会社との連携強化が必須である。セメントメーカは高炉スラグ微粉末などの混和材を用いないポルトランドセメントの製造が主力となっている。これは廃棄物の焼却処分や有効利用の観点から社会的に有益な側面があるが,脱炭素の観点から見直しが必要であると言える。また,ポルトランドセメントが主体となっている生コンの商流では低炭素コンクリートは特殊品扱いとなり,コスト増とも相まって普及が進まないのが現状である。

4.当社および関係団体の具体的アクション
当社の建築工事に積極的に低炭素コンクリートを使用するように働きかける。また,高炉スラグ微粉末コンクリートのうち,ECMコンクリートは㈱竹中工務店と共同で開発したものであり,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organizationの略)研究の成果である。NEDO研究終了後の受け皿として日本スラグセメント・コンクリート技術研究会(以降,スラグ研究会という)も発足され,ECMコンクリートの普及に取り組んでいる。これらのことから竹中工務店やスラグ研究会,さらにはスラグ研究会の会員各社とも連携して普及活動に取り組む。また,エコクリートR3も産学が一体となったSRY研究会を発足し普及に向けた体制を構築している。

5.チャレンジが実現した場合の定量的な効果
3種の高炉スラグ微粉末コンクリートの適用により建物全体のCO2排出量の約10%削減となり,これは一般的な業務ビルで算出した場合約1000t-CO2となり,10.8万本分のスギ人工林が1年間に吸収するCO2量と同じ削減効果が期待できる。また,エコクリートR3も約6000m3適用した建築工事において建物全体のCO2排出量の約10%(約480t-CO2)の削減効果があり,4.6万本分のスギ人工林が1年間に吸収するCO2量と同じ削減効果が得られた。

連携先

株式会社竹中工務店
日本スラグセメント・コンクリート技術研究会

補足情報

詳細は,当社技術研究所ホームページを参照
https://www.kajima.co.jp/tech/katri/index-j.html

なお,高炉スラグ微粉末コンクリートのうち「ECMコンクリート」はECM共同研究開発チーム〔代表:㈱竹中工務店)〕として第25回地球環境大賞〔主催:フジサンケイグループ (経済産業省、環境省、文部科学省、国土交通省、農林水産省、一般社団法人 日本経済団体連合会)〕を2016年4月ほか多くの賞を受賞している。

鹿島環境ビジョン:トリプルZero2050
https://www.kajima.co.jp/csr/environment/target/index-j.html

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