EN

REDD+事業の実現と拡大に向けた技術のイノベーション

日本アジアグループ株式会社

図1. REDD+事業を実施しているインドネシア南スマトラ州オーガン・コムリン・イリール県

図2. 現在の炭素モニタリング技術

図3. シルボフィッシャリー

図4. 炭素モニタリングの技術革新

概要

当社グループでは、2015年からYL Forest社と共に、インドネシア国においてREDD+事業に取り組んでいます。

REDD+(Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation)とは、途上国における森林減少・劣化抑制に加え、森林保全、森林経営、森林炭素ストックの強化なども含めてCO2の排出削減を目指すものです。
REDD+の実施には、リモートセンシングによる炭素モニタリング、森林保全の他に金融ノウハウ等を融合し進めていく総合力が必要です。

当社グループの持つ空間情報技術と金融ノウハウ、そしてYL Forest社が有する森林保全技術を融合しREDD+事業にチャレンジしています。

将来的には、炭素モニタリングをより簡便に行う技術革新と、市場メカニズムの活用により、REDD+を持続可能な事業として定着させ、気候変動対策に貢献していくことを目指しています。

説明

森林保全は、今世紀後半にネットゼロを目指すために欠くことのできない施策です。REDD+は森林保全によるCO2排出抑制効果にとどまらず、生物多様性、水源涵養(かんよう)、土壌保全など森林のもたらす様々な効果を、現地住民の持続可能な社会構築に結びつけることのできる手法で、気候変動対策の緩和策、適応策の双方を兼ね備えた施策と言えます。

REDD+は、対象面積が広く、事業遂行には少なくとも数百人の現地住民の協力が必要となります。これは雇用効果を生みますが、そのための実行資金も必要になります。そのため、森林保全活動を世界に普及させ継続していくためには、政府、国際機関による支援だけでなく、民間資金の活用が必要不可欠です。したがって、民間企業がインセンティブをもって積極的に行動できる仕組みづくり、そして民間資金の有効活用が求められます。

国際航業㈱では、民間の評価認定機関であるVerraを通してクレジットを創出し、民間資金を導入しながらREDD+事業を実施することにより、現地住民の生活の保障と気候変動問題に対する理解を浸透させ、持続可能な気候変動対策活動を世界に広く普及させていくことを目標としています。そして第一歩として、2015年からYL Forest社と共にインドネシア南スマトラ州オーガン・コムリン・イリール県にてREDD+事業に取り組んでいます。(図1)。

当地域で実施しているREDD+は、マングローブ林の減少抑制および近接地域における植林活動から構成されています。国際航業㈱が有する炭素モニタリング技術(リモートセンシングと地上調査の融合)により、マングローブ林減少の状況と炭素蓄積量の変化を把握し(図2)、その要因を調査したところ、地元住民によるエビ養殖池開発に向けた森林伐採であることが特定されました。そのため、シルボフィッシャリーと呼ばれる植林と水産業を両立させた方法を導入することにより、マングローブ林の回復を図っています。

シルボフィッシャリーとは、造林業(Silviculture)と水産業(Fishery)を組み合わせた造語であり、養殖池の中にマングローブを植林し、森林と養殖を複合させた自然共生型の養殖技術を意味しています(図3)。

マングローブ林の減少抑制・回復および植林は、CO2排出削減だけでなく、魚類、鳥類、昆虫などの生物多様性保全にも大きく貢献します。またエビ養殖で生計を立てていた地元住民には、気候変動問題に対する啓発を行うと共に違法伐採や森林火災に対するパトロール隊の結成、植林活動への参加など、代替えする業務を提供することにより生計手段を確保しています。さらに学校や娯楽施設建設等についても積極的にサポートを行い、現地政府や住民との良好な関係を築くことで、本プロジェクトへの参加協力者の数は数百名にまで増やすことができています。加えて、マングローブ林の回復は、気候変動対策における緩和策の他に、高波や台風などに対する適応策としても機能します。

REDD+事業を持続可能なものにするためには、炭素モニタリングの技術革新が重要です。現在の炭素モニタリング技術は、リモートセンシングによる森林面積モニタリングと地上調査による排出係数を組み合わせていますが、地上調査に膨大な労力を要しています。しかし、宇宙から樹高等の三次元データを取得可能な衛星ライダーの出現やドローンの普及などにより、近い将来、地上調査を代替する技術の導入が実現しそうです。
さらに、宇宙からCO2濃度を直接観測することができる「いぶき2号(GOSAT-2:温室効果ガス観測技術衛星2号)」のようなリモートセンシング技術も実用化されています。現在は空間分析能力が低いため、グローバルな観測に留まっていますが、センサ技術の進化や低高度プラットフォームへの搭載により能力が向上すれば、炭素モニタリングをより直接的かつ簡便に行うことができるため、その技術動向に注目しています(図4)。

REDD+は、リモートセンシングという環境技術とカーボンクレジットの創出・活用という金融手法を融合したプロジェクトであり、BECCS(Bio-energy with Carbon Capture and Storage)などとならぶ、CO2の大量削減技術です。

決して容易ではありませんが、当社グループは、REDD+に取り組むことによって、気候変動対策における緩和策と適応策の双方に貢献し、プロジェクト自身の持続性を保ち、現地住民の持続可能な社会の構築と世界のネットゼロに向けて大きく貢献することを目指しています。

連携先

YL Forest CO., Ltd.

この会社の他の事例

気候変動による自然災害死者数ゼロを目指した災害予測監視システムの構築

日本アジアグループ株式会社

> 詳細を見る

類似事例

2モータシステム用パワーユニット 「4GL-IPU」

三菱電機株式会社

> 詳細を見る

AI/IoTを活用した分散電源(VPP)のデマンドレスポンス(DR)対応

日本電気株式会社

> 詳細を見る

AI制御で最大50%の基地局電力使用量を削減

KDDI株式会社

> 詳細を見る

BEMS (Building Energy Management System)

鹿島建設株式会社

> 詳細を見る

CO₂を分離するサブナノセラミック膜の開発

日本ガイシ株式会社

> 詳細を見る