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「医療への貢献」と「成長を続ける医療分野での温室効果ガス排出量削減」の両立にチャレンジ

テルモ株式会社

概要

テルモは、「医療を通じて社会に貢献する」という企業理念のもと、世界160以上の国や地域で医療機器・医薬品の製造販売を行っています。

医療機器・医薬品市場は年平均5-6%の成長が見込まれる成長性の高い市場分野で、生活習慣病の蔓延、中国・インドなど新興市場の潜在的な機会の高まりが予測されるため、全世界で着実な成長が見込まれています。また世界では、先進国・発展途上国を問わず医療格差が存在し、持続可能な開発目標(SDGs)においてもゴール3(すべての人に健康と福祉を)の中で、「保健医療サービスが身近に提供される」、「感染症になる子どもたちに必要な対策や支援を」が掲げられ、医療機器・医薬品の生産量の増加は不可欠です。

このような市場環境のもと、テルモでは、SBTイニシアチブの削減シナリオに基づき、2030年度をゴールとする温室効果ガス排出量削減目標(SBT:Science Based Targets)を設定しました。自社の温室効果ガス排出量の削減に加え、サプライチェーン排出量の削減にチャレンジすることで、「医療への貢献」と「成長を続ける医療分野における温室効果ガス排出量削減」の両立を実現していきます。

説明

テルモでは、以下の温室効果ガス排出量削減目標(SBT)を設定し、「チャレンジ・ゼロ」の実現に向けた具体的なアクションを実施します。

【テルモグループのSBT】
・ SCOPE1&2
2030年度のCO2排出量を2018年度比で30%削減
・ SCOPE3
2030年度の売上収益あたりのCO2排出量を2018年度比で60%削減

1. SCOPE1&2排出量の削減
① 省エネルギーの推進
・ 設備更新時等にBPT(Best Practice Technologies)の共有やBAT(Best Available Technologies)の導入により、更なるエネルギー効率向上に取り組みます。
・ 空調や滅菌設備などの効率的な運用、生産プロセスの改善などを実施し、オフィスや製品を生産するために必要なエネルギー使用量の削減に取り組みます。

② 再生可能エネルギーの活用
・ 工場屋根への太陽光発電設備の設置、再生可能エネルギー由来電力の購入など再生可能エネルギーを積極的に活用することによりCO2排出量を削減します。

2. SCOPE3排出量の削減
テルモは主に医療機関で使用される医療機器、医薬品の製造・販売をしています。世界の多くの国々の医療現場では、感染症を防ぎ、より多くの患者さんが安全で安心な医療を実現することが何より優先すべき課題の一つです。感染症の病原体で、医療現場の機器・器具・環境は汚染されやすく、感染予防・汚染拡散防止の観点から,注射器や輸液製剤などは再使用を避けることが望ましいとされています。
弊社の使い切り製品はその課題を解決するために不可欠で、かつ、医療従事者の誰もが使用する非常にベーシックな製品と位置づけられています。しかしながら、使い切り製品は1回限りの使用で多くの原材料を消費することになります。また、完成した製品は、開発途上国を含む世界160以上の国で販売されるため、都度、その輸送時に多くの温室効果ガスを排出することは避けられません。
安全で安心な医療を提供するため、規制や物理的制約のため、現在の使い切り製品の使用方法を複数回使用に安易に変更することはできませんが、テルモでは下記の取組みに継続して努めることで、「成長を続ける医療分野における温室効果ガス排出量削減」の実現にチャレンジします。

① 新しい治療方法の提供
世界の死因のトップは狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患で、その数は約943万人、全死因の約17%を占めています。治療方法の一つとして、先端にバルーンやステントが付いたカテーテルを用いて、血管の狭い部分や詰まった箇所を拡げる血管内治療が行われています。従来は脚の付け根の血管からカテーテルを挿入する方法(Transfemoral Intervention: TFI)が主流でしたが、最近は手首の血管から挿入する方法(Transradial Intervention: TRI)が増えています。TRI はTFIと異なり、脚の付け根を止血する必要がないため、一般的に手術後も早期に歩行でき、入院期間が短くて済むとされています。さらに、カテーテル挿入部における術後の出血性合併症の発生率も少ないとされ、患者さんのQOL向上や医療削減への寄与が期待されています。米国での研究では、医療費が1件あたり9万円程少なく済むという報告もあります。
このことは、エコへの貢献にも繋がると私たちは考えています。低侵襲治療が可能となったことにより、従来までの治療に必要としていた医療機器や医薬品を削減することが可能となり、治療に必要なSCOPE3排出量を大幅に削減することができるからです。
一方で、カテーテルを挿入する手首の血管は細く、心臓までの血管も蛇行しているため、より技能が必要とされます。テルモではTRI用製品の開発や、技能習得のためのトレーニングの機会を積極的に設けることで、各国での普及に努めてきました。こうした継続的な取り組みもあり、現在、虚血性心疾患のカテーテル治療に占めるTRI の比率は、中国で約90%、日本で約70%、アジアや欧州では40~50%程度と推定され、10年前には数%程度しかなかった米国でも、現在は35%程度まで普及が進んできました。
テルモは今後も、各国の医療機関、学会、行政とも連携しながら、TRI の普及を促進していきます。現地の医療現場の課題に応じて、必要な製品の提供やトレーニングの支援などを継続的に行うことで、より良い医療の普及と医療に関わるSCOPE3排出量の削減にチャレンジします。

② 製品の小型化・軽量化、生産プロセスの改善
 テルモでは、人にも環境にもやさしい製品開発を促進するための独自の基準「Human×Eco(ヒューマン・バイ・エコ)開発指針」を制定し、製品の開発にこの基準を適用しています。製品設計、資材調達、製造、輸送、使用から廃棄まで、「Human×Eco開発指針」に合った活動かどうかをレビューする仕組みを常に回すことで、SCOPE3排出量の削減と使い切り製品による医療現場への貢献との両立にチャレンジし続けます。
製品を構成する部材点数の削減、生産時に発生する部材廃棄量の削減による資源投入量の削減などを推進することで、調達した製品(原材料・部品・サービス)の製造、輸送・配送(上流、下流)のSCOPE3排出量の削減にチャレンジします。

③ サプライヤーとの協働
テルモは2019年にテルモの調達活動における基本姿勢を示した「テルモグループ調達方針」、「サプライヤーガイドライン」を制定しました。ガイドラインにおいて、全てのサプライヤーに、温室効果ガスの排出削減、水やエネルギーの有効利用、省資源化(Reduce、Reuse、Recycle) などの推進を要請しています。
今後、主なサプライヤーと弊社のSBTを共有し、下記に関する協力を依頼することでSCOPE3排出量の削減にチャレンジします。

・ カテゴリー1: 原材料の生産における温室効果ガス関連データの提供(見える化の推進)と温室効果ガス排出量の削減、環境負荷の少ない原材料の開発、など
・ カテゴリー4&9: 同業他社との共同配送、貨物の積載効率の向上、電気自動車の活用、トラック輸送から鉄道や船舶輸送への変更などモーダルシフトの推進、物流拠点の集約化や輸送経路の最適化、など

テルモでは、上記の取組みにチャレンジすることにより、「医療への貢献」と「成長を続ける医療分野における温室効果ガス排出量削減」の両立を実現していきます。

補足情報

テルモサステナビリティレポート
https://www.terumo.co.jp/sustainability/report/index.html

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