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中規模オフィスビルの更新による普及型ZEBの実現

ダイキン工業株式会社

概要

省エネ化が遅れている中規模のオフィスビルにおいて汎用技術を組み合わせた設備更新や運用管理でZEB化に取り組んでいます。

パリ協定を踏まえ、日本政府も2030年に2013年度比26%の温室効果ガス削減を宣言し、ビルのZEB化を推進しています。これまでビルのZEB化には複雑な技術や膨大な導入コストが必要とされていました。当社は、自社が入居する中規模ビルにおいて、ビルでのエネルギー消費が大きい空調・換気・照明の設備更新とコントローラーでの集中管理を徹底することで、一次エネルギー消費量を基準値と比較して55%削減し、ZEB Ready※を達成しました。

この取り組みのノウハウは、管理者の不在によりエネルギー管理が難しい中規模オフィスビルのZEB化の普及に大きく寄与すると考えています。

※一般的な建物(リファレンスビル)と比較してエネルギー消費量が50%以下のビル。

 

説明

実施の対象は1997年9月に建てられた2620m2の中規模ビルです。入居者はダイキン工業ならびに関係会社です。WEBPRO(エネルギー消費性能計算プログラム〈非住宅版〉)の試算による一次エネルギー消費量は、既に発売されている照明、空調、換気機器による更新のみで基準値と比較して55%削減できるZEB Readyの設計としました。

 

省エネの取り組みで実施した主な3つの技術:

(1) 潜熱顕熱分離空調システム

当社は温度と湿度を分離し、それぞれを高効率な機器で個別制御することで省エネルギーと快適性の両立を目指しました。潜熱顕熱分離空調システムは、湿度をコントロールする調湿外気処理機『DESICA』と温度をコントロールする高顕熱ビル用マルチエアコンで構成されます。『DESICA』が湿度の処理をすることで、ビル用マルチエアコンは温度処理に特化でき、冷房時は蒸発温度を高くすることで圧縮機の負荷を下げ、エネルギー効率を大幅に上げることができます。

(2) 空調・換気・照明を一括管理するシステム

ZEBを実現するために、一つのコントローラーで空調、換気に加え、照明も一括で制御できる低コストな制御システムを採用しました。このシステムにより、管理者不在の中小規模ビルにおいても機器のスケジュール管理、消し忘れ防止、予熱、予冷運転など、きめ細かい管理ができるようになり、省コスト、省スペースで大幅な省エネを実現しています。また、日本では事例が少ない国際規格のDALI制御を用いた照明制御により、一灯一灯の照度管理で省エネを実現しています。

(3) 既設空調機運転データ分析による最適空調機の選定

ZEBロードマップフォローアップ委員会が公表しているとりまとめ(案)では、既存ビルは利用用途の変更やLED、PCなどの省エネ化による発熱量の削減にもかかわらず、過去と同容量の空調システムに更新され非効率な運転となっているため、対策が必要であると指摘されています。

そこで、当社は空調機の運転状態を遠隔監視システムで計測し、更新前の状態と比較しながら機器更新を実施しました。外気温度が高くなっても空調負荷は約130W/m2以下となっており、更新前の204W/m2を下回りました。検証後に、気象、内部発熱、換気負荷の条件を見直し、空調機を選定しました。

 

グラフは空調更新後の1年間の一次エネルギー消費量の実績を示しています。縦軸は一次エネルギー原単位を示し、棒グラフは国の指定する基準値とH29年度の実績値、折れ線グラフはそれらの積算値を示しています。前述の取り組みに加え、更なる省エネ達成に向け、二重窓、太陽光発電、ZEBモニターを設置して計測をしました。各月、確実に消費電力量が削減でき、1年間では基準値と比べて67%の削減を実現しました。

 

ダイキンでは「環境ビジョン2050」を掲げ、当社製品のライフサイクルを通して生じる温室効果ガス排出のネット・ゼロをめざしています。しかし、IEAによれば世界の空調需要が2050年には現在の3倍になると予測されているなど、今後ますます空調機が世界で拡大するので温室効果ガス排出のネット・ゼロ実現はハードルが高く、空調機器の効率化や使用冷媒の低GWP化といった「製品」の温暖化影響低減だけでは実現が困難であると考えています。

そこで、当社ではネット・ゼロを実現する施策の柱の一つを「ソリューション」とし、エネルギーマネジメントによる建物と一体となった運用省エネの拡大をめざしています。更新物件にも対応できる本チャレンジの「普及型ZEB」を今後拡大していくことで、当社の掲げる「環境ビジョン2050」を実現に貢献していきます。

 

補足情報

本案件に関するニュースリリース

2019年01月18日

平成30年度 省エネ大賞において「中規模オフィスビルの更新による普及型ZEBの実現」が「資源エネルギー庁長官賞」を受賞

https://www.daikin.co.jp/press/2019/20190118/

  

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