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木質バイオマスのカスケード利用による分散型炭素貯留技術

株式会社フジタ

概要

本技術は、大気中のCO2をバイオマスとして回収、エネルギー変換後に、副生物を水処理材化し、最終的に農用地に肥料として供給する、地産地消型の炭素貯留技術である。具体的には、①地域内で収集可能なバイオマスを用いて分散型のガス化発電を行い、②副生炭化物に特殊処理を施しリン吸着機能を付加した炭化物(プライムカーボン®)を製造し、③下水処理場などでリン吸着材として有効利用し、④水処理後のリン炭を農用地の肥料として利用することで、炭素貯留とともに地域における経済と環境の好循環を実現する木質バイオマスのカスケード利用技術である。

説明

温室効果ガスの削減に向けFIT制度が導入され、近年バイオマス発電の容量が増加しているが、そのほとんどは採算がとれるとされている5MW以上の大規模な蒸気タービン方式の発電に集中しているが、発電所周辺では燃料木材の調達を賄いきれず、海外から木チップやPKSを輸入しているのが現状である。一方、ガス化発電システムは小規模でも発電効率が高く、燃料消費量も少ないため地産地消に適しているが、エネルギー換算で発電の2倍程度の熱が発生するため、安定した熱需要先を見つけなければ採算性が確保できない。また、発電に伴い炭化物が副生するが、現状では産業廃棄物として処分されることも多く、さらに採算性を低下させている。
また、欧米を中心に炭素貯留の取り組みとして、BECCS(BioEnergy Carbon Capture & Strage)やバイオ炭の農地貯留が先行している。BECCSは二酸化炭素の分離回収設備を備えた大規模のバイオマス発電施設となり、地層等への貯留についての環境影響評価に課題がある。また、バイオ炭は未利用バイオマス等を原料に製造した炭化物を土壌改良材として農地に炭素貯留する取り組みであるが、作物の生育効果に対してバイオ炭の製造コストが高く、普及拡大に繋がっていない。
上記課題を解決するために、本技術では、木質バイオマス発電で副生する炭化物に新たに水処理材としての商品価値を付加するとともに、農用地の作物に対しても土壌改良だけでなくの肥料機能も併せ持つ、経済的に自立した地産地消・分散型の炭素貯留システムを確立することを目的としている。具体的には、①地域内で収集可能な木質バイオマスを用いて分散型のガス化発電を行い、②副生炭化物に特殊処理を施しリン吸着機能を付加した炭化物(プライムカーボン®)を製造し、③下水処理場などでリン吸着材として有効利用し、④水処理後のリン炭を農用地の肥料として利用することで、炭素貯留とともに地域における経済と環境の好循環を実現する木質バイオマスのカスケード利用技術である。本技術の社会実装によるCO2削減ポテンシャルは、日本の温室効果ガス排出量の約2%に相当する2,600万t/年、海外に普及展開を図ることで世界の温室効果ガス排出量の約4%に相当する約13億t/年と試算される。

課題
実排水を用いた実験により高いリン吸着機能や、リン炭の成分分析や作物栽培試験から良好な作物生育効果が得られているが、本技術の社会実装には、システム全体を通じた技術検証および経済性評価のためのパイロットスケール試験が必要となる。

具体的なアクション
本技術は、林業分野、エネルギー分野、環境・資源循環分野、農業分野など管轄省庁も複数に跨る革新技術であることから、パイロットスケール試験や実証事業においては自治体の理解や協力を得つつ国のモデル事業化を目指す。

波及効果
本技術の国内外への普及展開により主に以下の効果が見込まれる。
・炭素貯留量は600万t/年、バイオマス発電によるCO2削減量を含めると2,600万t/年と試算され、これは日本の温室効果ガス排出量の2%に相当する。さらに開発技術を国際展開することで、炭素貯留量は3億t/年、バイオマス発電を含めると13億t/年となり、これは世界の排出量の4%に相当することから、CO2削減対策として大いに期待できる。
・主伐・間伐材や林地残材、剪定枝、廃木材等、地域の未利用バイオマス資源の有効利用が促進され、地域における林業の復興、振興に繋がる。
・将来的な枯渇が懸念され、世界の戦略資源物質かつ我が国が100%輸入に依存しているリン資源の効果的な回収と、リン鉱石採取に伴う国際的な環境破壊の抑制および、地域の貴重な資源である水環境の保全など、持続可能な社会の実現に幅広く貢献する。
・地域において、林業、分散型再生可能エネルギー事業、水処理事業、肥料化事業などの新たな経済が生み出され、雇用が創出されるなど、経済と環境の好循環を実現する。

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